2010年10月29日金曜日

ドームパーゴラ

先日10月27日、ドームパーゴラを設置しました。
前日から組立に取り掛かり、夕方にはすぐ暗くなったので早めに切り上げ県民の森のバンガローに泊まることにしました。
この日の晩をさかいに気温は急激に冷え込み、冬に入っていきました。



 作業は全体的にさほど難を感じませんでしたが、最後一番上の部材の接合はきつすぎてかなり手こずらされました。径80ミリの材は太いほうなので、今後はやはり65ミリにしていくべきだとつくづく思い知らされました。
このくらいの人力で行なう構造の組立は、基本的に素手の力で微妙にしなる材寸が大切です。それから今回の接合はまったく余裕なくピッタリの孔を開けておきましたが、ねじ込む方の孔は別として、通し孔の方はコーチスクリューがかなりぐらつくほどの遊びのあるくらいの余裕で空けておくべきでした。

実物は2011年の3月末まで設置されています。
ご興味のある方は是非訪れてみてください。県民の森はかなり広く、自然を満喫するには充分すぎるほど環境が整っています。
展示場所へのアクセスは、とよはしアートユニット参加の「きてみん!奥三河」というイベントで詳しく紹介されています。http://t-artunit.blogspot.com/2010/10/blog-post.html


このパーゴラドームは後々搬出されますが、そのときは私の事務所兼アトリエの庭にでも設置を考えています。
そのために今からつるバラをはわせるイメージを膨らませているのです。
バラに関してはまったくの素人ですが、このたびも天使の導きがありました。

「生徒に準備ができたとき、教師が現れる」という格言があります。
現場近くのお鮨屋さんを訪れたとき、もうすでに真っ暗でしたが、お店の女将さんが店の周りをライトアップしてバラのお庭を見せてくれました。
何と150種のバラが育てられており、感動と驚きでした。
翌日パーゴラにふさわしいバラのことを教えていただき、感謝・感謝・感謝です。
奥三河を訪れた際は是非立ち寄ってみてください。鮨処つかさです。


※組立工程についての記載は次回にまわしたいと思います。

2010年10月25日月曜日

ダヴィンチ・グリットによるドームパーゴラ

ツリーハウスの方をお休みにしている間、パーゴラ作りを進めていました。
ダヴィンチ・グリットによるドーム状のパーゴラです。

以前からその案は暖めておいたのですが、その意思も機会もなく、結局10年近くほったらかしでした。
グリットによる球形の基本設計は実験の過程で残っていたのですが、それも10年も前のものです。
今回、その幾何解析に至るまでの思考を取り戻すのに時間がかかり、設計の調整にはかなり苦労してしまいました。
そのため、納期まで時間もなく、丸太杭で注文というより、径も長さも指定した丸棒で注文せざるをえず、材料の調達には多大な出費がかかってしまいました。

今回設計に時間を割いたのには、球形のダヴィンチ・グリットのシステムをある程度明確にしておこうと考えていたからです。
後々、ツリーハウスに転用した際、その部材加工のデータをサイズに合わせて算出でき、皆さんに公開できればよいかと思っています。

今回、使う部材径はφ80mmと60mmの二種です。次回行なうときは、丸太杭を使う予定です。それなら安価にできます。
部材径も、設計に時間をかけて調整し、標準サイズのφ65mmに統一すれば、加工や接合の作業量もぐっと軽減できるでしょう。

部材径φ80mm
治具に固定しながら墨付け、穴あけ

塗装途中
今回、設置は公園であり、アート性に遊具性も兼ねるため、その着色はかなり目立つ赤と緑でおさめました。
塗料は植物系のバトンと緑はキシラを使用。
バトンは初めて使うので様子見です。
一方のキシラはとても環境には有害だと感じました。
作業場の隣の樹に鳩が巣を作っていたのですが、塗り始めた途端にいなくなってしまいました。鳩にはすまない気持ちでいっぱいです。かなり匂いが強く嫌悪感を感じます。
その点バトンの方はさほど嫌な匂いはしません。

2010年10月22日金曜日

ワークショップでの骨組み

先月(9/19)のワークショップで行なったことは、ある程度記録しておいたのですが、下書きで保管したままですっかり忘れていました。約一ヵ月後になりますが、まとめておきましょう。

当日は、ランダム型の骨組みのパターンを行なってみました。
この方法は実に本能的です。設計図や寸法を測るような前段階を踏まず、直接樹に挑んでいきます。
どんなかたちのツリーハウスになるかは最初から明確に分からなくてもかまいません。おおよそのビジョンがあれば取り掛かかってよいのです。ツリーハウスに適した樹であれば、最終的なかたちは幹の張り具合が決めてくれます。

とはいっても、始めるにあたっては骨組みの原理や組み方・しくみなどの知識や技術が必要です。
今回はこの実践を中心に行いました。
過去ブログではこの骨組みの組み方を試行錯誤で見い出しておりますが、今回ワークショップを機に整理し、順序だてて説明しておきましょう。

図1で示しているように、おおよそ樹の高さ1/3
がハウスの中心だと無難です。

取り掛かりが一番困難かと思います。というのは、何の足場や支えもないところから始めなければならないからです。
ダヴィンチ・グリットで足場を直接組む方が理想であり、効率もいいのです。
しかし、必ずしもそのようには最初からいきませし、安全を第一に考えれば必要なところには補助的に材をとして足場を確保しなければなりません。
また、足場が出来上がってからは、体を支える手すりが必要です。これには安全ベルト等を引掛けておく必要もあるからです。
このような安全上の材は骨組みの一部として組み込んでも良いですし、必要がなければ後から間引くか、引き抜きにくければ切り落とせば良いでしょう。
このような補助的な骨組みの組み方は、技術的というより経験から学ぶものだと思います。それから作業的にはかなり困難ではあるにしても、この作業から徐々に体の柔軟さとバランス感覚も養われてくるものです。

さて、先のワークショップでは、ダヴィンチ・グリットの最も重要な点であるの最小単位を制作し、その原理を体感することにしました。

右回り
最小単位は三角形の骨組みです。組み方は材の端部が互い違いになっています。
しかも、三角形をなす頂点のいずれも規則的に交差しています。
これが第一原則で、ダヴィンチ・グリットが別名Reciprocal Grid(相互に組み込まれた格子) またはReciprocal Frame といわれている所以です。
左回り
第二の原則は、部材を組む規則性には右左の二つの方向があるということです。
図中の矢印で示している様に、材の端が回転しながら同様の交差を繰り返しています。
これをデザインや幾何学では回転対称といい、余談ながら家紋の意匠にはこの性質が頻繁に用いられています。
この回転方向、最初にどちらかの方向を決めたら最後に骨組みを閉じるように組終わるまで同じ方向で組んでいきます。組んでいる途中、逆の組み方を入れ込むと、規則性が崩れて作業効率が途端に悪くなると思います。
曲率の変化
第三の原則は、グリットの大きさを変えることで骨組みの輪郭を調整するということです。
主にグリットは三角形ですが、三角形の頂点が五つや六つとなることがあります。
場合によっては四つとか七つもあるでしょう。
しかし、調整のしやすさは三角形です。三角形を小さくすればそれだけ構成する部材が傾斜していきます。逆に大きくすればするほど、その傾斜がゆるくなり限りなく平面に近づいていくのです。
この性質に従えば、三角形の頂点をなす部材の端部は常に外方を取ってください。要するに組立作業は常に内側より行なうので、部材の端部は図で示すように外側に来るようにします。
そうすることで骨組みに凸面を形成し、緩やかなカーブを描く輪郭を形成することができるのです。
この凸面の曲率の調整は三角形のグリットで行なう他、それ以外の多角形のグリットでもできます。
また、その多角形も辺の長さを同じくして角数が増えるほど、相対的に平面に近づいていきます。
加えて、部材の太さによってもある程度調整できます。
しかし、この2点の感覚はある程度の経験を通して理解できるものかと察します。
当面慣れるまでは、多角形のグリットは六角形もしくは五角形で落ち着くものです。

連結の数
六角形のグリット構成よりも五角形のそれの方が曲率が高い
最後に、樹上にて骨組みを組み立てる場合、ある程度地上において三角形のグリットを組んでおくほうが良いでしょう。これを樹上に持ち上げて連結していくと作業効率がいいのです。
この三角形のグリット同士は、隣り合って連結はできません。それは、隣り合うグリット同士が部材を共有しながら連結しているためです。そのためてある程度余裕の長さで切った部材を同時に樹上に持上げておきます。
図中、破線で示した箇所が単独でつなぐ部材です。一人で作業する場合、部材の端部のどちらかをゴムバンドで仮固定すると良いでしょう。ある程度足場や手すりが出来上がって安全な体勢が確保できてからは2人作業で進めると効率が良いでしょう。

後、付け加えておかなければならないことが1点ありました。三角形のグリットの大きさですが、入り口以外下方を向くグリットは、そこから人が落ちない程度の大きさにとどめておくべきです。




2010年10月12日火曜日

システム型ツリーハウス、その原型作り

ここしばらくほとんど森に行ってません。これから活動するには快適な季節に入ろうとしているにもかかわらず。
じつは先月末より、奥三河で開かれるイベント「アートの森」出展の作品制作に追われているのです。

「アートの森」といったテーマなら、本来は山の中でワークショップでも開きツリーハウスをつくるのが個人的には本望ですが、それはずっと先のことになりそうです。作品は、色々制約がある中、先々ツリーハウスにも転用できる内容におさめておきました。
システム型のツリーハウスをつくる原型を今回データとして算出しておいて、後々役立てようと思っているのです。
それで、今回手掛けるのは球形のジオデシックタイプ、その最も小さいパターンにしました。
以前示したシステム型の一つは右の画像ですが、これとは異なる形です。

最初に示したシステム型のあるパターン
今回、骨組みは完全に球を内接するので籠状のボールのような形となります。
右の画像がその通称ジオデシックパターンの一例で、その模型です。
軸数120本構成
今回そのパターンの中でも最も軸数が少なく小さなサイズ(90本構成)になる形を選びました。
軸数90本構成
この形の軸を延長し、自立させます。写真右はその一部を示しています。これにかなり変容を加えたものが左の小さな模型です。
不鮮明でわかりにくいので、それを拡大した写真を次に示しましょう。
軸足延長による三角形の支柱で自立するドームとなります。
このあたりまでが私的にはアートとなります。

これにさらにデザイン的な視点から機能を見い出す作業が加わります。
私的には骨組みに植物をつたわせて緑化ドームを演出するのがねらいです。

正面画像、とはいっても入り口は5箇所あり、かなり開放的
つる状に伸びる植物なら何でもかまわないのです。
この場合、ガーデニングではパーゴラといいますが、通常は矩形で藤棚として知られているものです。庭に木陰を作り、夏の日差しを避ける役目をします。
くわえて、植物は花が咲くほうがよろしいです。
アーチ状のパーゴラでは、つるバラをつたわせて庭を美しく飾り立てるのが一般的です。

今回のようなドーム型のパーゴラは高価なこともあって少ないですが、バラの花で覆われたドームは想像するだけでワクワクします。ましてやドームの中から上を眺めるとバラの花がうつむき加減に咲き乱れ、かぐわしい香りが漂うなか、木漏れ日が落ちるラウンドテーブルでひと時のティータイムを過ごすのは最高の贅沢ではないでしょうか。
真上から見たところ。つるを誘導しやすいグリット