工法の要

現在、ツリーハウス制作にあたって様々な工法がとられています。
それらの工法の要は、樹上のハウスをどのように樹が支えるかに集約されています。

その中でも、現時点で樹に最も負担が少ないといわれているのが、WTCで開発された特殊なボルトを樹に打ち込むGL工法と呼ばれるものです。
ジャパン・ツリーハウス・ネットワーク(日本ツリーハウス協会)でもこの工法を推奨しているそうです。

※WTC(World Treehouse Conferense)
アメリカオレゴン州にて毎年開催される世界的ツリーハウスワークショップ。
TreeHouseエンジニアリング、GL工法のテクニック、Treehouseデザイン、
Treeバイオロジー、Treeクライミングなどを総合的に研究。

※GL工法
WTCにて10年間に渡って研究、検証された結果、現時点でもっとも木にかける
負担が少ないとされる工法。




しかし制作のために木に穴をあけ、ボルトを打つという行為は少なからず樹にストレス を与えるます。その点でこの工法(二番目の図)は本来エコロジカルなものではありません。

ツリーハウス6それに、日本人の多くは生きた樹へのボルトの打ち込みに対しては抵抗を感じずにはいられません。
そのため、サンドウィッチ工法(三番目の図)、いわゆる幹を板を介して挟みボルトで締め付ける工法を取る人たちも多いのです。

これに対しツリーハウスの大御所ピーター・ネルソン氏は、幹の3分の1を締め付けると樹液の流れを止め幹が立ち枯れになるといって、この工法には否定的です。
それに加え、このような発想が出てくる精神文化も時代錯誤的なものと否定されています。
GL工法を推奨するWTCでも、樹の生長を邪魔しないとしてこの工法の意義を主張しています。

実際、サンドウィッチ工法は締め付ける面が大きくて樹には負担になります。
その点、GL工法の方がはるかに負担は少ないでしょう。

'10/4/3追加:(その後、ツリーハウスのコミュニティーからの情報で、サンドウィチ工法で12年保っているケースがありました。ハウスが軽量ならばむしろこちらの方が、制作効率もよく幹が細ければ樹に負担がかからないのではないかと思います。

ツリーハウスの大御所ピーター・ネルソン氏の著書やGL工法は米国向きの内容で、日本向きではないように思えます。
日本の場合、そんなに大木があるわけでもなく、たとえあったとしてもそのような樹は御神木に近く、よほどでない限り穴を開けることなどできません。こういったメンタルな文化は必要だと思います。 2つの工法には賛否両論があるにせよ、どうやら軽量化の方向がその論議を解消してくれそうです。

しかし、問題は固定方法にあるのでなく、ハウスの重量が過剰な点とその形状が樹形とアンバランスな点にあることだと思います。人間の都合のいいようなハウス観をそのまま樹上に持ってこようとするため、必要以上に重くなり、このようなボルトを打ち込む工法が出てくるのではないでしょうか。


そうした観点からすると、GL工法の方は人間中心の発想から導かれたものと感じずにはいられません。
一方、サンドウィッチ工法には批判があるものの、樹への精神的な配慮がうかがえます。 

私個人としては、ハウスをできる限り軽量にする。かたちを樹形にあわせて荷重を複数の幹に分散化させる。それも解決への道になるかと思います。 

そこで今年は思い切って、より実験的になりますが、ジオデシック理論による荷重分散型のツリーハウスを思案しています。 

掲載の写真はツリーハウスの本からの引用

10/4/3追加:軽量化も含めその他技術的な課題は、そこの森や環境の状態に大変左右される2次的な要素だと思います。
ツリーハウスの1次的な要素は、山や森林そして里山に私たちがどう向き合っていくかに依るものだと思います。
生活の糧・森林整備・レクリエーション・里山再生などありますが、それによってツリーハウスの形態も異なり、その下位に技術的な課題がひかえています。

たとえば、というかちなみに、私が招かれている森も、針葉樹が目だち、戦後何十年もほとんど人が手を加えていなかったので日の当らない昼間でも薄暗い森です。
落葉広葉樹を残し、先ずは針葉樹を伐採してその材を有効利用しなければなりません。

太くて重い材は、樹に寄りかかる感じのツリーデッキにしております。こういった材はふんだんにあるためもったいない使い方かもしれませが、今はベストなのだと思っています。