2012年2月5日日曜日

神石の山に向う



神石の山に向う。

前回、笠山から望んだ遠方に見える山だ。この山の向うには雨乞い山があり、両山とも、伊勢と富士を結ぶレイライン上に位置している。

山の形はなだらかな三角錐で、等高線の地図で見るとみごとにピラミッド状になっているのが分かる。海側の尾根がへこんでいるのは採石の跡で、反対側から見ると岩肌が白くむき出している。このあたりの地名が白谷というのはチャートや石灰岩による岩山で、昔はむき出しであったからである。

実際、この山を地図で見ても名前は載っていない。地元の人もすでに山の名前など当の昔に忘れてしまった。それほどまでに今は無用の山となってしまっている。

ここを初めて訪れたアイヌのシャーマンが山の名前を名付けた。
ここには大きな岩が三つあり、それが御神体となっている。地元の古老ぐらいしか知りえないことを彼らは話す。山は三ヶ根山を通りぬけるレイライン上にあり非常に磁場の高い霊山に値するところである。だからこの山が蘇ることで人をも蘇らせることができる。そう言って彼は神石の詩を山に書き残していった。
現在、この詩は山の中腹にある炭焼き小屋に掲げられている。
彼らは山の入り口に差し掛かっただけで、どこにどんなキノコが生えているのかが分かるそうだ。実際、彼の言うとおりの場所に駆け登っていくと、そのとおりのキノコが生えていた。
昔アイヌの子供たちは、初めて山に入るときキノコの匂いを嗅がされて、その匂いを頼りに山を駆け巡ったという。

この山だけで人は生きていくことができる。そう彼は言い放った。

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