2012年2月8日水曜日

茅葺のツリーハウスを目指す

寒中、伊吹おろしが吹きすさぶ、私は忽然と河川敷に立ちいで、黙々と茅を刈り始めた。
こんなことをやる人間は今ではどうかしている。

だが数年前から取り掛かったこの木と同化するツリーハウスには、この茅でしか屋根を葺けないということがようやく今になって分かった。
恒久的なものづくりばかり行なっていると、永久的なサイクルにおけるものづくりがなかなか見えてこないものだ。こういったサイクルの中では、すでにものづくりの領域を超える。自己の存在や証などエゴに等しい。それは循環するサイクルの一部であり全てに組み込まれるからだ。

この森が眠りから覚める時が近い。私がこんなことを行なっているのがその証拠だ。
春になればここには大勢の子供たちがやって来る。
樹の家はまるで子供たちの巣になるだろう。樹に寄りかかることで根っこを通して地球とつながり、魂を育む場となるであろう。


Covered with corrugated roofing sheets have almost exactly been removed by a typhoon in 2010.
February 2012. I'm aiming to change it completely to a thatched roof.
波板シートで覆ったルーフィングは2010年の台風ではがされてほとんどそのまま。
2012年2月現在、これを全面萱葺きに変え、最終的な完成を目指す。
The structure by the reciprocal grid also known as the Da Vinci Grid. 5m high,6m long,
April.2008
レシプロカル・グリット、別名ダヴィンチ・グリットによる骨組み
2008年4月


 

2012年2月6日月曜日

神石山の森に入る

山と村の間は昔里山だった。今はうっそうとした密林だが、石垣がまるで遺跡のようにあちこちに見える。棚田の跡だ。所どころ面影を残してはいるものの、杉の植林によってほとんど陰になっている。その杉も野放しとなりあちこちで石垣が崩れている。

中腹に登ると、聳え立つように巨大なオブジェが迫ってきた。
ツリーデッキだ。

周りの杉を倒して立ち上げている。
昨年はほとんどこの森に来ていない。新しく作ったとは聞いていたが、以前にもまして高くなり。技術も向上した様が伺える。
相変わらず細部は大雑把に作ってあるが、ここにはこういったものを驚くほどの短期間に作ってしまう集団がいる。

2012年2月5日日曜日

神石の山に向う



神石の山に向う。

前回、笠山から望んだ遠方に見える山だ。この山の向うには雨乞い山があり、両山とも、伊勢と富士を結ぶレイライン上に位置している。

山の形はなだらかな三角錐で、等高線の地図で見るとみごとにピラミッド状になっているのが分かる。海側の尾根がへこんでいるのは採石の跡で、反対側から見ると岩肌が白くむき出している。このあたりの地名が白谷というのはチャートや石灰岩による岩山で、昔はむき出しであったからである。

実際、この山を地図で見ても名前は載っていない。地元の人もすでに山の名前など当の昔に忘れてしまった。それほどまでに今は無用の山となってしまっている。

ここを初めて訪れたアイヌのシャーマンが山の名前を名付けた。
ここには大きな岩が三つあり、それが御神体となっている。地元の古老ぐらいしか知りえないことを彼らは話す。山は三ヶ根山を通りぬけるレイライン上にあり非常に磁場の高い霊山に値するところである。だからこの山が蘇ることで人をも蘇らせることができる。そう言って彼は神石の詩を山に書き残していった。
現在、この詩は山の中腹にある炭焼き小屋に掲げられている。
彼らは山の入り口に差し掛かっただけで、どこにどんなキノコが生えているのかが分かるそうだ。実際、彼の言うとおりの場所に駆け登っていくと、そのとおりのキノコが生えていた。
昔アイヌの子供たちは、初めて山に入るときキノコの匂いを嗅がされて、その匂いを頼りに山を駆け巡ったという。

この山だけで人は生きていくことができる。そう彼は言い放った。